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教員インタビュー

このページでは1ヶ月に1回、当センターの教員へのインタビューや、センターが研究・開発中のプロジェクトに関する情報提供を通じて、国内最大の留学生教育機関であるJLCTUFSの「いま」を伝えていきます。
第9回は日本語ご担当の中井陽子専任講師へのインタビューです。

第9回 中井 陽子 専任講師

社会の中の大学、社会の中の研究を考えたい

インタビュアー(=Q):日はお忙しいところ、ありがとうございます。まずご出身と、小さい頃のご自身について教えていただけますか。
中井専任講師(=A):生まれは、京都市内です。修士を終えるまで、ずっと自宅から通っていました。小学校のときは、そうですね、読書が好きで、学校の図書館で一度に10冊くらい本を借り出していました、『ファラオの秘密』とか。あと、物語を書くのも好きでした。中学校に上がってからは英語が好きになって、高校までずっとそうで、大学も結局、英米語学科に進みました。

Q:英語が好きになったきっかけは、何かあるのですか。
A:そうですね、中1のときの英語の先生がマニアックなまでに発音を追及する方で、map のPとか、すごく強調して発音するんですけど、そういうところから興味を持ったことはあると思います。あとはアメリカの文化でしょうか。洋楽ならシンディ・ローパーとかマドンナ、マイケル・ジャクソン、映画なら『フラッシュ・ダンス』とかが好きでした。

Q:じゃあ大学でも留学とかされたんですか。
A:はい、大学2年のときはカリフォルニアに、3年のときはシドニーに、それぞれホームステイしながら英語学校に短期留学しました。

Q:そのときに日本語教育に出会ったんですか。
A:いいえ、私はもう高校生のときから「日本語教師になる!」と決めていました。

Q:ええっ!?
A:高校2年生のときに英会話学校に通ってたんですが、私、部活(ダンス部)をずっとやっていたので、大学生や社会人に混ざって、夜のクラスを受講していたんです。そこで大学生のお姉さんに「こうやって英語を教えるのって面白そうですね」と言ったら、彼女が「反対に日本語教師っていう仕事もあるのよ」と教えてくれて、すぐにもう(笑)、それを志して今日まで、という感じです。

Q:すると日本語教師としてのデビューは、いつになるのですか。
A:学部と修士まで通った関西外大で、英語圏の教員やその家族に教える経験を持ったのが最初ですね。多いときは週に6時間くらいやりました。時給は1000円ですから、安かったんですが(笑)。

Q:それから留学なさったのですね。
A:そうです。日本の大学の修士課程は理論とか哲学が中心で、もう少し実践的なことも勉強したいと思って、2つ目の修士を取りに、ミネソタ大学へ行きました。専攻は日本語学です。

Q:ツインシティ校ですか、名門ですね。
A:それで、私はミネアポリスに3年いました。それから99年に帰国して、国内のいろいろなところで日本語を教え始めました。群馬大学では社会情報学部と留学生センターの両方で教えましたし、それから関東学院大学の国際センターと法学部、早稲田大学、そして前任校の国際教養大学などです。

Q:そうですか。でも中井先生といえば大変な数の業績で知られていますが、一般にあまりたくさんのコマ数を持つと、研究に割く時間が持ちにくくなるのが普通だと思いますが、何か秘訣のようなものはあるのですか。
A:そうですねえ(少し考えて)、あの、むしろ時間が限られているぞ、という窮地に陥ったことが良かったんじゃないかと思うときがあります。変な例えなんですが、人類はアフリカで誕生したそうですが、森にいてゴリラに進化していったほうは食べ物も豊富だし、住むところも不自由しなかったそうです。ところが平原に放り出された人類は食べ物も探さなくちゃいけない、伝達のためのことばも発達させなくちゃいけない、で追い詰められてこその力を発揮したそうです。私は性格的に追い詰められないとやらない方なんで、それがかえって良かったような気もします。

Q:なるほど。では研究のことも伺いたいのですが、現在の学術的な関心は、どのあたりにあるのですか。
A:私はずっと談話分析、会話教育に関心があります。自分がおしゃべりだからでしょうかね(笑)。会話の分析をした上で、研究と実践を結びつけていくということです。あと私は社会貢献のための研究ということを、特に最近は強く意識しています。

Q:そこをもう少しお話いただけませんか。
A:研究が社会貢献に結びつく、というのは理系、特に工学系などでは当然なことだと思いますが、談話分析というものも、その研究がどこへ行くのか、何のためにしているのか、きちんと意識しておかないと、少なくとも私の場合は分析のための分析になってしまいがちです。やはり自分がしていることが社会のためにどう役立つのか、という点には意識的でありたいと思っています。

Q:ありがとうございました。最後に、これから日本語教師を目指す方に対して、メッセージをお願いしたいのですが。
A:仕事でも研究でも、楽しむことが一番だと思います。これは日本語教師に限ったことではありませんが、したいことが見つかっているというのは強いと思います。それとともに、自分の興味を満たすことだけで満足せず、その研究が社会のためにどう役立つかも考えながら研究に取り組んでいただけたらいいなと思います。

Q:今日は長い時間、ありがとうございました。

インタビューを終えて─

長いインタビューであったが、聞き手として最も印象に残ったことは、ご自身の研究を世の中にどのように役立てるか、という視点を中井先生が不断にお持ちであったことだ。逆に考えれば、社会貢献への熱情が、中井先生の数多い研究論文、実践研究、学会発表などの動機付けになっているとも言えよう。そしてそれを表情硬く、苦しそうに取り組むのではなく、高校時代からの夢を叶えた喜びに正直に、楽しんで進めていることが研究者としての、また教育者としての中井先生の強みであり、また魅力でもあると感じられた。

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